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[音楽探訪] ペルゴレージ/スターバト・マーテル〔大石祥子/1994.9.10〕

 音楽が大好きで、でも楽器といえばリコーダーくらいしかできなかった私は、高校に入学した時楽器をさわれるクラブに入ろうと考えました。まだどういう音楽を自分は目指すのか分かっていなかった頃ですが、吹奏楽部を見学に行って、何だか「違うな」と感じたことを覚えています。60人を越える花形クラブでしたが、華やかな完成品を支える一人一人の存在はとても没個性的で、まるで機械の歯車のように思えたのです。

 楽器をあきらめた私は、しょうがなく音楽部(コーラス部)を見に行きました。吹奏楽とは正反対で「地味な」クラブです。部員はたった8人。そんな少人数で一体何ができるのか。何をしようとしているのか、とてもいぶかしく思ったものです。同じクラスの友達に頼み込まれていなければそれっきりだったかもしれません。

 しかしいざ歌ってみるとその魅力にたちまちとりつかれてしまったのです。こんなにきれいな曲を、こんなに真剣にできるなんて!そして「真剣」にするということがこんなに楽しいなんて!たった8人だから大したことはできない、とか下手くそだから「音楽」には程遠い、なんて考えは間違っていました。「良い音楽」を作るのは人数でも技術でもなく、どれだけ真剣にその曲と向き合っているか、ということなのです。私にそれを教えてくれたのは、その当時音楽部を指導していた先生と、その先生が選んだペルゴレージの「スターバト・マーテル」という曲でした。

 ですからこの曲は今でも私にとって忘れられない曲なのです。作曲者ペルゴレージはわずか26歳で夭折したとされる、 18世紀の天才肌の作曲家。その代表作をレコードで聴くのに当時から愛聴しているのがルネ・ヤーコプスの演奏です。当時はまだ珍しかった、古楽器で演奏されるペルゴレージはまさに敬虔な祈りの音楽です。カウンター・テナー(ルネちゃんは男なのです!)で、素朴かつ野太い表現力のあるヤーコプスの声は今ではもうすっかり病みつきになってしまいました。最近は指揮者としての活躍が目覚ましく、古楽オペラでは第一人者として目されています。

*カウンター・テナー:昔教会に女性は入れず、合唱高音部は少年か特殊技術を持つ男性が歌った。

(アンサンブル通信 1994.9.10/第32号より)

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